「安倍氏の戦略研究が日本理解に必要」 台湾の政治大が「研究センター」設立大会開催へ
【台北=西見由章】台湾の名門、政治大が21日、「安倍晋三研究センター」の設立大会を開く。頼清徳総統も出席する。台湾の大学が内外の政治家の名を冠した研究機関を設けるのは初めて。同センター主任に就任する李世暉(り・せいき)国際事務学部教授が産経新聞の取材に応じ、「現代の日本を理解するには安倍元首相の戦略を研究する必要がある。台日の共通利益がどこにあるのかを提示したい」と設立理由を語った。
「戦略観は大きく変化しない」
研究対象は安倍氏が提唱した外交戦略「自由で開かれたインド太平洋」や半導体サプライチェーン(供給網)の強化、人工知能(AI)などを通じて社会課題を解決する「ソサエティー5・0」など。大学内の同センターに「安倍晋三図書室」を併設し、安倍氏に関する研究や資料などを収集する。「安倍氏は日本の国家利益と未来の発展を包括的に考え、実現しようとした。そうした戦略観は日本において今後10年、20年は大きく変化しないだろう」と李氏は指摘した。
日台の研究者の間でも、特に経済政策「アベノミクス」の評価は割れている。「安倍氏の戦略や国家利益の観点を研究、理論化し、その基礎の上で研究者が議論する場をつくりたい」。毎年1回、国際シンポジウムも開催する予定だ。
「今後、日本国内で安倍氏を再評価する時期が来るだろう。そのときには、われわれのいろんな研究成果を参考材料にしてもらいたい」と展望を語る。
「一方的に協力を求めても…」
台湾では日本の歴史や文化に詳しく親日感情を抱く人も多いが、その戦略的な国家利益を理解している人は少ないと感じている。台湾統一を掲げる中国の軍事的圧力が増す中、「台湾が日本の国家利益と戦略の根源を理解しないまま一方的に協力を求めても話がかみあわない」とクギをさす。
台湾人の対日理解を深めるため、研究センターは来年4月、政治家や企業家、メディア関係者を対象に「安倍政経塾」を開講する予定。台湾人研究者や日本人の専門家らを講師に迎え「客観的な日本の情報や研究を紹介したい」と話す。
民間交流の活性化に向けて「台日交流貢献賞」も創設する。日本の学者や企業家、文化人を表彰する制度で、第1回の授賞式は来年9月を予定している。台湾人学生の日本留学を支援する奨学金も創設予定だ。

